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塾長コラム

【塾長コラム】みはじ(きはじ)指導の貧困①

悪名高き【みはじの魔方陣】
「三つの式を覚えこめ」もひどすぎないか?
 5年生の算数を担当することになった新任講師と教務室でちょっとした議論になったことがあります。だいぶ前の話です。

 ある日の教務室、授業前の準備時間に、そのA先生のテキストをのぞきこむと、三分割された不思議な円がいくつも並んでいました。円の中には、『み・は・じ』の文字が入っていて、A先生いわく、これは本日塾生たちに指導する『算数/時間と速さと道のり』の文章問題を簡単に解くことができる特別なツールとのこと。

 それは、算数数学科のプロ教師であればどなたでもご存じの、あの悪名高き『みはじ(きはじ、と呼ばれることもあります)の円の公式』でした。

 中学受験塾では少し早まることもありますが、時間と速さと道のりの関係を問われる文章題は、ふつうの小学校では5年生の3学期に登場します。そして、それは、手を変え品を変え、その後中1の一次方程式でも中2の連立方程式でも、解くのが難しい問題の一つとして子供たちに恐れられている、あれです。

 『時間と速さと道のり』の文章題は、たしかにやっかいで大抵の5年生はおちこぼれてしまう単元です。

 でも、この“みはじの魔方陣”を教えて、この中に数字を当てはめれば、答えだけは本当に簡単に出てしまう。

試しに“みはじ”で答えを出してみます。
 教科書に載っている問題から──

【例題】ある自動車は200Kmの道のりを2時間で進みました。この自動車の速さを時速で求めましょう。

 みはじ、とは、道のり、速さ、時間の頭文字をとったものです。
 み・・・道のり
  は・・・速さ
 じ・・・時間

 【例題】では、道のりが200Kmですから、“みはじの魔方陣”の『み(道のり)』の中に200を入れます。そして、同じく魔方陣の『じ(時間)』の中に2の数字を入れます。
 魔方陣の指示通り、200÷2を計算すると100になるので、この例題の答えは“時速100Km”となります。

 ご自身も日暮里にある名門進学塾の出身だと自慢するA先生は、「時間と速さの問題は、断然、この“みはじ”を使って解かせたい」と強く主張。本質的な指導をモットーとする塾長と、当然がごとく指導法がぶつかりました。
 ‥‥「それでいいのかなあ」

 この、答えを出してしまう便利な機械仕掛けの“みはじの魔方陣”は、絶対に間違った指導と言われながらも、未だにこの方法で解けと教えられている可哀想な子供たちがたくさんいるそうです。

 なぜか?
 それは(特に中学受験塾で)、ほとんどの講師は、上司から子供たちの模擬テストの偏差値を上げるようプレッシャーをかけられているからです。
 40分か50分で算数の10問ほどを全部解ききるのは至難の業です。考えなくてもいいからとにかく短時間で答えが出てしまうならその方法で結果を出すというのが、塾講師としての正義、ということなのでしょう。

 しかし、これは絶対に間違っています。
 考えなくてもいいからヒミツの“みはじの魔方陣”を覚えさせて、そこに数字をあてはめて答えを出す?
 そうです。この勉クラの塾長コラムを愛読して下さっている皆さんならご存じの、深谷塾長がもっとも嫌う指導法です。
 考えて答えにたどり着くという算数数学の本当の楽しさをそっちのけにした指導。みはじの円の定式を暗記させるだけの無味乾燥な指導法。ひどすぎる。子どもたちの数学嫌いを増やしてしまいかねない悪手です。

 もっと工夫して、きちんと『時間と速さと道のり』の関係を子供たちに伝えなさい。そうすれば、その先にあるさらなる難問に、子供たちは一人で考え、答えにきっとたどり着きます。

 だれがなんと言おうと、それが、算数数学指導の王道なはずなのです。この子たちはやがて大人になって住宅ローンのこと、子育てや夫婦関係のこと、上司との人間関係のこと、あるいは、仕事上大きな壁にぶつかるに違いありません。その時に、この子たちの『考える力』をしっかり武器として使えるようにする、それが算数数学講師の努めです。
 考えなくてもいいから、解答ツールにあてはめて速く答えにたどり着け、はあまりにもひどい貧しい指導法です。

(②に続く/豊かな指導例を掲げました)

進学教室勉強クラブ塾長
深谷仁一
日本放送作家協会・日本脚本家連盟員

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