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塾長コラム

【塾長コラム】我々は、何を教えなければならないか?

 小5の算数に『台形の面積の求め方』という単元があります。
その指導をどのように進めるか、先生のその進め方によって、算数(幾何)の学びを台無しにしかねない単元です。

 正方形や長方形、平行四辺形の面積について学んでいる5年生の子供たちに、フツウの先生は、自身のもっている“知識”をいきなり押しつけます。
──はい、今日は“台形の面積の求め方”を学びます。
  台形の面積は(上底+下底)×高さ÷2という公式で求めることができます。
と、切り出して……。

 台形の面積を求める“公式”があるのだから、この単元はその公式=知識を子供たちに示して何が悪いか、と、素人の先生は疑問に思うかもしれませんが、実は、この導入は、算数(幾何)の指導をとてもさみしいものにしてしまいます。

 まず、公式を丸暗記させることが、はたして算数指導といえるか、という問題。
 『カッコ、ジョウテイたすカテイ、カッコトジル、かける高さ、割る2』
 はい、これが台形の面積を求める公式です、と説明し、黒板に描かれている台形のそれぞれの辺を指し示し、“公式に数字をあてはめさせて答えを出す”ことが先生の役割だと思い込んでいる先生が、残念ながら、……実に多い。


 例えば、
 この日の授業までに長方形の面積の出し方がわかっている子供たちに向かって、次のように切り出したとするとどうでしょう。

──ねえ、この図形Bは『台形』っていうカタチなんだけど、どうやったら面積を求められると思う?
 生徒たちは、これまでに学んだ正方形や長方形とちがって斜めになった辺Bの赤い線の辺)があることで、一瞬とまどいます。                       

 その瞬間が大事です。そこでどうしたらこの図形の面積が求められるのかについて、子供たちの頭脳が動き出します。

 とまどいが大きければ、ここでヒントを与えます。
──そうなんだよね、この図形はこの“斜めの辺”があるから長方形みたいには簡単に面積が計算できないんだよねえ……
 そして、あらかじめ準備した図形Cを、図形の反対側にそっと置きます……

──生徒たちの目が輝きます! 
 そうか、2倍の大きさの長方形の面積を求めてから、それを半分に割ると、
台形Bの面積が求められるんだあ と。

 ここで、子供たちは、簡単には面積の出せない図形も、たとえば同じ大きさの図形を反対側に貼り合わせるというような斬新な工夫をすれば、面積を求めることもできる、という貴重な体験をします。

 これは、公式をマル暗記させて、それを覚えろと指示するのとは本質的にまるで違う教育的体験です。

 こうした指導の中で、「先生、算数って、答えを求めるためにこんなことまでしちゃっていいんですね!」と、心をふるわせる子もいます。
──そうだよ。線や数を加えたり、図形を逆さまにしたり、算数や数学はルール内で自由にやっていいことになってるんだ。

……はい、もうご理解頂いたでしょうか? 算数(幾何)の授業は、公式を覚えさせるのではなくて、いろいろと考え方をかえて工夫することの面白さ、楽しさを体験させることが指導の本筋なのです

 これに興味を持った子は、このあとの幾何学の授業で、例えば、超難関校の応用問題で、他の子にはとても思いつかない補助線を引いて、ちゃっかり解を求めたりするという能力にたどり着きます。

 『台形の面積の求め方』という単元ひとつとっても、子供たちに【考える力=思考力】を身につけてもらうという目標を、指導する側が持ち得るかどうかが、実はもっとも大事な指導の肝になるということです。

                  *

 将来、数学の専門家になるという子はそう多くはいません。でも、人生の難しい局面というものに出逢ったときに、たとえばその難局を解決する力、工夫できる力、それをしっかり育てることが、算数・数学の本道だと思うのです。

 私は部下たちに、常々、少し遠回りしてでも、教科指導は本質、本道を大事にしていこうと呼びかけています。

進学教室勉強クラブ
塾長 深  谷  仁  一
日本放送作家協会・日本脚本家協会員

台形の面積、どうやって求めるの?
何か、工夫する方法はないのかなあ?
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