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塾長コラム

【塾長コラム】読書は先生が率先して!

 最近の文科省の調査によると、1ヶ月の間に1冊も本を読まない人が62%もいるらしい。かくいう私も、元脚本家であるにもかかわらず小説はよほど話題になったもの以外はほとんど読まない。私の読書は評論や歴史書、社会学、宗教学にかたよっている。だから偉そうなことは言えないがそれにしてもひと月に1冊も本を読まない人がこんなにいるとは驚いた。

 家庭内に本を読むという文化が無いと、そのうちの子供にも当然のことながら本を読む習慣など生まれようもない。家の環境に影響されるから、可哀想だがお父さんやお母さんがテレビで野球を観たり、バラエティ番組にどっぷりの生活をしていると、子供も残念なことに何ともインテリジェンスの欠けた人格に育っていくようだ。スマホの弊害も大か。

 教育業界で困るのは、肝心の先生側に読書の習慣の少ないことだ。毎日の生活に追われてただ無為に年齢を重ねてしまっている先生が案外多い。

 彼らの多くは、自身が学生時代に得た知識を何の更新もせず、中学生たちの読む学校の教科書や参考書と同じものを読み、それをなぞるだけでギリギリ教壇に立っているというありさまである。

 だから、塾業界でも、子供たちの前でキャッチーな冗談が言えたり、おためごかしの優しい言葉をかけたりできると、その先生はもう“いい先生”になってしまう。
 そういう先生の授業は一見楽しそうに見えても中身が薄い。クオリティーの高い先生の授業は中学生たちと同じ地平などにおらず、学校の教科書レベルの知識をこえて奥行きのある知識を背景にした本物の授業を展開しているものだ

 実は、学校の教科書は、中身が薄すぎて説明不足の部分が意外に多い。だから、もうちょとのところで生徒たちの興味をそいでいる場合が案外多い。しかし、真に“いい先生”は、学校の教科書をこえた内容を自らの知識でふくらませた奥行きのある“いい授業”を展開し、子供たちの心を真にふるわせられる。

 ここで国語の授業の一例。
 あのさ、この『平家物語/扇の的』の屋島の戦いの記述だけどさ、那須与一がどんなに弓の名人っていっても40間(75メートル)先にある扇の、しかもかなめ)の部分を射貫くなんてありえねえよな。たぶん、ゴルゴ13だって無理かもよ。つまりこれは物語上のフィクションだろうね、と教えると生徒たちは古典の授業にゴルゴ13の名前がでてきてどっとうけます。ふつうならここまで。
 いくらか本を読んでいる先生だと、
 ──ところでさ、なんで那須与一は赤い日の丸が入った扇のど真ん中に当てずに要の部分を射たかというとさ、このときの追い詰められた平宗盛軍と追い詰める源義経軍はね、どちらが後白河上皇の命による正規軍か微妙なわけさ。平家方の船には安徳天皇だって乗ってるし、天皇家の象徴である三種の神器だってある。扇の的の真ん中に描かれた赤い日の丸は天皇家=日本国の象徴だから、うっかりそれを射貫いてしまったら、源氏、つまり那須与一方が、逆賊になっちまうのよ。だから、扇の真ん中でなく要の部分を射貫いたってんだ。当時の源平の戦はそれほど微妙だったんだね。
 なんて無駄話をしてやると、平安末期、摂関政治後の日本に天皇家は日本国をまとめるための重要な役目をしていたんだってことまで生徒たちに伝えられる。

 だから一見無駄話に聞こえるがとても貴重な学びだ。無教養な学生アルバイトの先生にはたぶん難しい授業の技だろう。

もう一例、歴史の授業で。
江戸時代の始め頃、キリスト教の布教に熱心なスペインは鎖国によって日本から閉め出した日本なのに、中国・朝鮮とともに何故かオランダは長崎の出島への入港を許可した。これ、生徒たちの多くはオランダは同じ西洋の国なのになぜ? という疑問がわく。学校の歴史の教科書にもフランシスコ・ザビエルのスペインは布教に熱心だったが、オランダはキリスト教の布教にあまり熱心ではなかったからとは書いてあるが、中学の教科書はそこまでだ。

 実は当時、ヨーロッパでは旧教カトリックと新教プロテスタントが殺し合いの宗教戦争の真っ最中だったのだけど、プロテスタントは、神の預言説というのを信じていてね、白人のヨーロッパ人は一生のかたちを神様が預言してくださると信じていたけれども、神は東洋の有色人なんかには預言など与えてくれないというのがプロテスタントであるのオランダ人の基本的な考え方。つまり、我々日本人をめちゃくちゃ差別していたからオランダ人は布教に熱心ではなかったんだね、と話してやると、妙に腑に落ちる。

 いつのころからか、歴史の授業は教科書の太字の部分語呂合わせで年号をマル暗記させるつまらない授業に成り下がっているのだけれど、きちんと広い知識のある先生に指導してもらうと、とっても楽しいものになる。

 でも、前提として、そういう広い知識をまず先生にもってもらうことが大切なのです。そして、そのためには、読書はとっても大切な授業研究になるわけです

 子供たちに『本を読め』と言う前に、まず、先生自身が読書の重要性に目覚めることが必要だと思うのですが、いかがかな。

勉強クラブ塾長 深 谷 仁 一
日本放送作家、日本脚本家連盟員
屋島の戦い/平家物語
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